エンジニアリングMay 25, 20227 分 READ

スタートアップが DevOps を実践すべき理由

Jacob Schmitt

シニア テクニカル コンテンツ マーケティング マネージャー

Stylized developers connect across a globe.

今は、スタートアップ企業を立ち上げるのにうってつけの時代です。 現代ではテクノロジー領域が大きく広がり、企業規模を問わず強力なデジタルツールを利用できるようになったことで、組織の設立 (と拡大) がかつてないほど簡単になったからです。

ほぼすべての企業がテクノロジーを基盤としており、リスク管理や開発スピード向上を求めるあらゆる業界に DevOps ツールと手法が普及しています。 そのため、スタートアップ企業としてコンセプト立案から収益化、さらにはその先まで、新規ビジネスの開拓を目指すのであれば、テクノロジーをフル活用する方法を理解することがきわめて重要です。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる急激な影響の 1 つとして、より良いテクノロジーソリューションに対する需要の高まりが挙げられます。 在宅勤務や各種オンラインサービスの素早い導入といった取り組みが進んだことで、テクノロジー企業はパンデミックの状況下をほぼダメージを負わずに切り抜けられ、また新興スタートアップ企業には豊富なチャンスが生まれました。

また、DevOps のような手法や、継続的インテグレーション & デプロイ (CI/CD) などの自動化テクノロジーを活用した組織では、パンデミック需要に自社のテクノロジー製品を適応させることに成功しています。大企業もスタートアップも、開発サイクルの迅速化を通じてソフトウェアの絶え間ない改善を実現できたからです。 小規模なスタートアップ企業が今後も競争力を維持するには、迅速にビルド、テスト、イテレーションを行う能力が不可欠です。

スタートアップ企業を取り巻く世界情勢

現代では、テクノロジーに精通しているスタートアップ企業にはあふれかえるほどのビジネスチャンスがありますが、同時に競争も避けられません。 ニッチな市場を探している企業は無数に存在します。そのため、スタートアップ企業として参入した市場が実は競合ひしめくレッドオーシャンであり、顧客や投資家、人材からの関心の奪い合いになってしまうというのはよくあることなのです。

過去数十年の間、スタートアップ企業とその文化は主に米国を中心とした現象でした。 しかし、今日ではスタートアップの精神は世界中に広がり、さらに多くの競合企業が生まれ、世界を舞台に競争しなければならない状況となっています。

かつて職場に多々存在していた国家間の壁はテクノロジーのおかげで解消されましたが、グローバルなスタートアップ企業には特有の課題がいくつも存在します。 たとえば、世界中のベンチャーキャピタル資金は大きく増加しており、ヨーロッパだけを見ても、2021 年における投資総額は過去の 410 億ドルからほぼ 3 倍の 1,200 億ドルにまで拡大しています。しかし、スタートアップ企業にとって、融資の確保やベンチャーキャピタルとの付き合いは難しいものであり、 本社がテクノロジー企業集積地の近辺になければこの問題は特に顕著です。 米国でさえ、シリコンバレー、シアトル、ニューヨーク、ボストンといった主要エリア以外に立地する場合、往々にして投資につながるコネクションを築きづらいものです。

また、ほとんどのスタートアップ企業にとっては、自社商品を販売する市場を探すうえで不可欠な業界のつながりを作るのも困難です。 従来、スタートアップ企業というのは、緊密なつながりの下で事業活動の支援を受けながら成長するものです。 そして、いざ支援から卒業し自立しようとすると、創業地には自社製品やサービスに対する需要がほとんどないとわかり、そのうえ業界における重要なコネクションも断たれて窮することがあります。

デジタルコラボレーションツールが登場し、国境やタイムゾーンを越えた共同作業が比較的簡単になったことで、優秀な人材を巡る競争も非常に激しくなりました。 さらに、リモートワークのおかげで、重宝されるスキルを持つ人材であれば勤務先をはるか遠方にまで求めることができます。そのため、スタートアップ企業にとっては、製品開発と成長維持に必要な人材の募集がいっそう難しくなりました。

表面上、リクルート対象の人材プールは大きくなっているものの、国外の従業員を雇用すると、重い税がかかる場合や、複数の国/地域にわたる法規制の順守といった難題に直面する可能性もあります。

このように多数の課題が存在するなかで、ヨーロッパの先進的なテクノロジースタートアップ企業は、人材に訴求しテクノロジーチームに定着させるため、さまざまな興味深い取り組みを行っています。

とは言え、前述の課題の多くは、スタートアップ企業やその従業員が対処できるものではありません。 競争の激しい環境において、組織は従業員の能力を最大限に引き出すとともに、従業員がテクノロジーリソースを最大限に利用できるよう、いっそうの努力をする必要があります。 そこで、DevOps と CI/CD の出番です。

DevOps と CI/CD を導入するメリット

DevOps と CI/CD の根幹にある考え方は、開発、テスト、デプロイのスピードを高めてテクノロジーを迅速にイテレーションできるようにする、というものです。 これは、スタートアップのニーズと非常に相性が良い考え方です。 というのも、スタートアップ企業が競争力を得て市場シェアを確保するには、製品を短期間で市場に投入し、製品の品質を継続的に向上させられなければなりません。 また、大手企業に勝とうとするのであれば、スピーディに行動し、トレンドや変化に対応する能力が欠かせません。

DevOps は、開発チームと運用チームの間に従来存在する壁を取り払うことで効果を発揮します。 DevOps チームでは、ソフトウェアライフサイクルの最初から最後まで開発担当と運用担当が連携するため、改善の余地を見つけ出しやすくなります。また、変更の統合も、日常業務をいたずらに妨害することなくシームレスに行えます。

DevOps のイテレーションプロセスは、CI/CD と組み合わせることでさらにそのスピードを高められます。 自動化ツールを使うと、開発者がコードを手動で統合およびデプロイする必要がなくなり、開発環境から運用環境へのコードの移行プロセスの効率が高まるので、迅速な開発サイクルを実現できます。 その結果、エンジニアは最も注力すべき対象に集中できるようになります。

DevOps 文化と CI/CD パイプライン(英語)は、瞬く間に業界標準として定着しつつあります。そのため、強固な DevOps 文化と実用的な CI/CD パイプラインがあれば、求職中のエンジニアを獲得しやすくなります。 一方で、DevOps を実践していない、または CI/CD を活用していない場合、採用活動が以前よりも困難になるかもしれません。DevOps や CI/CD は高品質なソフトウェア作成の基本であると広く考えられているので、エンジニアをはじめとする人材はそれらを導入していない組織に不信感を抱くことがあるからです。 有能なエンジニアリングチームを結成したいと考えているなら、成熟した DevOps 文化を確立することが非常に重要です。 売り手市場で引く手あまたのエンジニアに自社の優良さを示すうえで、こうした文化の存在は大きな効果を発揮します。

スタートアップとして DevOps を導入する

DevOps 手法の導入に関して言えば、スタートアップ企業は大手企業よりも有利です。 DevOps 文化の醸成を始める時期が早いほど、DevOps の原則を会社のワークフローにより深く根付かせられるからです。 大手企業では既に別の文化を確立されているケースがあるのに対し、スタートアップ企業には創業当初から DevOps を採用するチャンスがあります。

DevOps プロセスの導入には、トップダウンとボトムアップの両方から取り組むのがお勧めです。 CTO から普通のエンジニアまで、組織を挙げて DevOps 手法の原則とその背後にある哲学に合わせましょう。

DevOps の導入を目指すスタートアップ企業に重要なのは、DevOps と CI/CD の実践経験のあるエンジニアを見つけることです。 理想的には、最初に雇用するエンジニアは、DevOps プロセスに直接携わった経験を持つ人材にしましょう。 スタートアップの初期段階においては、DevOps スキルに加え、CI/CD パイプラインの実装と保守に関する実践的な知識も持ったエンジニアが大きく活躍する可能性があります。

さらに、DevOps の実践経験を持つ人材を仲間にできれば、車輪の再開発のようなよくあるミスを防ぐこともできます。 DevOps と CI/CD の導入に関しては、組織ごとに試行錯誤や工夫が必要ですが、既存のスタートアップの取り組みから学べることもたくさんあります。

技術的負債の蓄積を防ぎ、継続的に成長するための確かな土台を作ることができます。 多くの組織にとって、デューデリジェンス監査は思いがけない出来事です。しかし、発足したばかりのエンジニアリングチームにとっては、デューデリジェンスの原則を理解し、デューデリジェンスの標準を頻繁に参照すると、非常に有益でしょう。 DevOps と同様に、厳しいデューデリジェンスプロセスを経験した人材から学べることはたくさんあります。たとえば、CircleCI が公開している Startup Spaces シリーズのパネルディスカッション動画「Technology Due Diligence 101 - Secrets From an Auditor」では、デューデリジェンスの詳しい情報が明かされています。

スタートアップ企業が成功に至るまでの道のり

スタートアップ企業が成功するまでの道のりは、長く、複雑で、際限ない困難が待ち受けています。 このように聞くと怯んでしまうかもしれませんが、さまざまなツール、テクノロジー、手法を駆使すれば、可能性の地平が大きく開けます。 DevOps などの手法や、CI/CD などの機能を備えた強力な自動化テクノロジーがあれば、小規模な組織でも他社と対等に競争し、顧客の求めるスピードとセキュリティを備えた世界レベルのソフトウェアをリリースできます。

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