はじめての CI/CD:初心者向け CircleCI 活用ガイド
CircleCI Japan GK リージョナル マーケティング マネージャー
CI/CD の基本とは?
CI/CD(継続的インテグレーションと継続的デリバリーまたはデプロイメント)は、ソフトウェア開発において、コードの品質とリリース速度を高めるための自動化プロセスです。これにより、手動での作業や人的エラーが減少し、コードがスムーズにリリースされる環境を構築できます。
- 継続的インテグレーション(CI: 開発者は小さな変更を頻繁にリポジトリにプッシュし、そのたびにコードの統合とテストが行われます。これにより、エラーを早期に発見でき、バグが本番環境に移行するリスクが減少します。また、コードの変更が少ないうちにテストすることで、修正がより容易になります。
- 継続的デリバリーとデプロイメント(CD: テストが完了したコードを次のステージング環境や本番環境に移行するプロセスを自動化します。CD には、継続的デリバリー(手動で最終デプロイを実施)と継続的デプロイメント(本番環境まで完全に自動化)の2種類があります。開発チームは短期間でのリリースが可能になり、変更や新機能が早くユーザーに届けられます。
CircleCI の特徴と強み
CircleCI は、クラウド上で動作する CI/CD ツールとして、シンプルなセットアップと柔軟なパイプライン構成が可能です。GitHub や Bitbucket と直接統合でき、コードがプッシュされると即座にビルドやテストが実行されます。また、クラウド版とサーバー版があるため、チームの規模や要件に応じた導入が可能です。
- Docker や複数のプラットフォームに対応:CircleCI はDocker をネイティブにサポートしており、開発環境と同じ条件でテストやビルドを実行可能です。また、Mac や Windows 環境にも対応しているため、クロスプラットフォームのプロジェクトにおいても強力なツールとなります。
- 設定ファイルの柔軟性:
.circleci/config.yml
という設定ファイルを用いて、CI/CD パイプラインの詳細なカスタマイズが可能です。YAML 形式でビルド・テスト・デプロイのステップを明確に管理できるため、複雑なワークフローにも対応でき、バージョン管理も容易です。
CircleCI を使った基本的な CI/CD 設定の流れ
CircleCI の設定は、リポジトリ内に作成する .circleci/config.yml
ファイルにすべて記述します。このファイルには、「ジョブ( jobs )」と「ワークフロー(workflows)」という2つの主な構成要素が含まれます。
- ジョブ(jobs: 個々のビルドステップを表し、ビルド、テスト、デプロイといった処理を定義します。ジョブ内で使用する Docker イメージを指定し、必要なコマンド(インストールやテストの実行など)を記述します。
- ワークフロー(workflows):ジョブの実行順序や依存関係を定義します。例えば、まずビルドとテストを行い、その結果に基づいてデプロイを行う、という一連の流れを指定します。
以下は、Node.js アプリケーションを CircleCI でビルド、テスト、デプロイするシンプルな構成例です。
version: 2.1
# ジョブの定義
jobs:
build:
docker:
- image: circleci/node:12
steps:
- checkout # コードをチェックアウト
- run: npm install # 依存関係をインストール
- run: npm test # テストの実行
deploy:
docker:
- image: circleci/node:12
steps:
- checkout
- run: npm run build # ビルドの実行
- run: npm run deploy # デプロイの実行
# ワークフローの定義
workflows:
version: 2
build_and_deploy:
jobs:
- build
- deploy:
requires:
- build # buildジョブが成功した場合のみdeployを実行
この設定により、CircleCI はリポジトリに新しいコードがプッシュされるたびにビルドとテストを実行し、成功すればデプロイまで自動で進行します。初めての設定においても、シンプルに構築しながら、次第にテストの詳細な条件や通知設定などを追加していくことができます。
CircleCI のパイプラインに役立つ Orbs
CircleCIでは、Orbs と呼ばれる再利用可能な設定パッケージを利用することで、パイプラインの効率をさらに向上できます。Orbs は、一般的な CI/CD タスク(たとえば、Docker ビルド、Slack 通知、AWS デプロイなど)を簡単に設定できるモジュールで、使いたい Orbs を宣言し、簡単なパラメーターを設定するだけで導入可能です。
例えば、Slack への通知を自動で行う Orbs を追加することで、テストの成功や失敗をリアルタイムでチームに共有でき、迅速な対応が可能になります。
version: 2.1
orbs:
slack: circleci/slack@4.4.2 # Slack Orbsの定義
workflows:
version: 2
build_and_notify:
jobs:
- build
post-steps:
- slack/notify:
event: fail # ジョブが失敗したときにSlackへ通知
Orbs を使うことで設定を短縮し、迅速に複雑なワークフローを実現できます。
活用例
活用例1:小規模開発チームでの CircleCI 導入
小規模のスタートアップでは、開発者が少人数で多数のタスクをこなす必要があるため、CircleCI のような CI/CD ツールが特に役立ちます。例えば、1週間に1回のリリースを目指している場合、CircleCI を使用してコードの自動テストと本番環境へのデプロイを設定することで、リリース前のバグ検出やデプロイミスを減らすことが可能です。
活用例2:エンタープライズ環境での CircleCI 利用
エンタープライズ環境では、より複雑なテストとステージング環境が必要です。CircleCI ではワークフロー機能を活用して、複数のビルドジョブを並行して実行したり、特定のステージが完了した後に次のステージに進む設定ができます。例えば、「ビルド → 自動テスト → セキュリティスキャン → 本番環境へデプロイ」といったパイプラインを構築することで、安定したリリースを実現できます。
まとめ
CI/CD は、現代の開発サイクルにおいて効率化の鍵となるプロセスです。CircleCI はその導入に適したプラットフォームであり、使いやすさと柔軟性が高く、多くのチームで採用されています。
はじめて CI/CD を導入する方も、CircleCI のシンプルな設定と強力な機能を利用すれば、開発プロセスを効率的に自動化できます。まずは基本的なビルドとテストから試し、少しずつデプロイの自動化まで進めることで、CI/CD のメリットを最大限に引き出しましょう。