現代の企業が抱えているさまざまな課題の中でも、リモートで勤務する従業員の管理は真っ先に挙げられる項目のひとつでしょう。 グローバル化が進み競争の激しい現代のビジネス環境では、各地に分散したチームをまとめ、交流を絶やさず、幸福度を高めることが非常に重要です。 信頼性に優れ、セキュアでコスト効率のよいソフトウェアツールを用意するだけでは、ややこしさの増すこの難題を完全に解決することはできません。 幸い、SaaS (Software as a Service) モデルはリモート環境と相性が良く、IT チームにとっては、オンプレミスのエンタープライズソフトウェアを実装しメンテナンスする方法に代わる選択肢となり得ます。
SaaS ならば、ユーザーは必要なときにどこからでも、クラウド経由でソフトウェアアプリケーションにアクセスできます。 ソフトウェアの実装、統合、メンテナンス、アップグレードと言っためんどうな作業は SaaS プロバイダーが請け負うので、ユーザー企業の IT 部門が苦労することもありません。 山のような要求にごくわずかなリソースで対応している IT 部門にとって、これは大きな助けになるでしょう。
SaaS には、エンタープライズソフトウェアのニーズに適した多くのメリットがあります。 この記事では、そのトップ 6 をご紹介します。
すぐに使える
新しい IT ソリューションの実装や統合を行う際は、スケジュールがずるずると延びてしまいがちです。 当初は小規模だった IT プロジェクトが、一大プロジェクトになってしまう場合もあります。 稼働開始日の発表に行き着くまでに、アプリケーションに複雑なカスタマイズが必要なケースも少なくありません。
一般的な SaaS アプリケーションはクラウドベースで、すぐに使えるようになっています。 また、オンプレミスアプリケーションと異なりクラウド上に存在しているので、従業員はすぐにアクセスして使うことができます。
SaaS なら時間を大幅に短縮できます。エンタープライズアプリケーションは利用可能になるまでに数日から数週間、時には数か月かかりますが、SaaS では数時間で利用できるのです。 利用までの時間短縮には、準備や移行のための裏方作業の削減以上に明白があります。最新アプリケーションをいち早く利用できるので、影響力を強め利益も高められます。
コストの削減
SaaS により、さまざまな面でコストを削減できます。 SaaS アプリケーションは特注不要で、サブスクリプション登録者を多数抱えているベンダーから入手できます。 サブスクリプションによる大規模な顧客基盤があるので、SaaS のコストは安価です。 それに対してスタンドアロンのソフトウェアは、インストール先がオンプレミスであり、ハードウェアとソフトウェアのコストが大幅に高くなることがあります。 ベースのソフトウェアコストを共同で負担しないので、すべてを自分たちで払わなければなりません。
SaaS にはスケールメリットがあるだけでなく、メンテナンスやパッチ作業、構成管理などの維持コストを解消できるというメリットもあります。こうした作業は SaaS ベンダーが担当してくれます。 さらに、お金と時間をかけてソフトウェアの機能のアップグレードや脆弱な部分へのパッチ適用を行わなくても、新たなマルウェアの脅威や他のセキュリティ上の脆弱性に対応できます。
ニーズが拡大した場合でも、SaaS 製品なら、予算の範囲内で利用拠点やユーザー数を拡大できます。
スケーラビリティと統合
さまざまな場所に存在する多くのユーザーに対応できる点から、SaaS を使用するメリットがもうひとつ生じます。それはスケーラビリティとインテグレーションです。
組織の成長に伴って新しい人材を雇っていけば、業務に携わる人の数はどんどんと増えていきます。 クラウドベースの SaaS アプリケーションなら、重要なソフトウェアやデータへのアクセス管理を簡素化できます。 スケーラブルであり、組織の新しい領域や展開済みの領域に簡単に統合できます。
他方のソリューション (オンプレミスモデル) では、このように手軽なスケールは不可能です。 まず IT 部門が新しいサーバー、ソフトウェア、配線、トレーニング、接続を確立しなければなりません。そのため、スケーリングや完全統合は至難の業となっています。
SaaS には戦略面の利点もあります。 組織が簡単かつ迅速にスケールすることができ、非クラウドベースのエンタープライズ規模のソフトウェアに付きものの悩みもありません。
アップグレード作業が不要
アップグレードはソフトウェア管理のアキレス腱と言えるでしょう。 DevOps は今や IT 業界では一般的な手法であり、運用の拡大や変更と同時に開発の実装を進めることができます。 それでも、ソフトウェアのバージョン間のアップグレードは厄介なプロセスです。 SaaS なら、こうした負担は基本的には SaaS プロバイダーが引き受けます。自社の IT 部門が担当する必要はありません。
また、SaaS では、マルウェアなどのセキュリティ上の脆弱性への対処の手間も抑えられます。 SaaS プロバイダーの IT チームが、新しいセキュリティ上の脅威をすばやく特定し、修正してくれるからです。 さらに、プロバイダーがテクノロジーの進化にあわせて新しい機能の導入と開発を行ってくれるので、その点でもユーザーの負担が軽減されます。
SaaS モデルでは、構成管理も SaaS プロバイダーが担当します。そのため、ユーザー組織はソフトウェアアップグレードの管理や実装から解放され、運用や戦略目標に専念できます。
使いやすい
新しいソフトウェアアプリケーションを使うユーザーがよくぶつかる問題として、ラーニングカーブが挙げられます。 新しいインターフェースや機能は慣れるまで時間がかかり、フラストレーションを感じることも往々にしてあります。
しかも開発者は、ユーザーのニーズに合わせてさまざまな微調整を行わなくてはなりません。 ヘルプデスクにソフトウェアの変更を依頼するユーザーも大勢います。
SaaS モデルの場合、ソフトウェアを使用するうえで解決する必要がある課題や調整作業の多くは、ベンダーの開発者が既に対応しています。 SaaS 製品を複数の企業が利用しているのであれば、製品ベンダーの開発者にはよくある不満やフィードバックが既に届いていて、改善措置も実施済みでしょう。 したがって、定評のある SaaS 製品を導入する場合、その製品はすぐに使える状態にあると信用できます。オンプレミスでソフトウェアを購入してインストールする場合は、必ずしもそうとは限りません。
ユーザーの要求に合わせて機能を調整するだけではなく、トレーニングも必要です。 ほとんどの SaaS モデルでは、サブスクリプションライセンスにトレーニングコンポーネントを付けて、ユーザーが遭遇するさまざまな問題に対処しています。 SaaS プロバイダーがチュートリアルや動画、ヘルプデスクも用意しているので、ユーザーは自力でプロバイダーからサポートを受けられます。組織内の IT 部門に助けを求める必要はありません。
トレーニングが提供される点と、長年の実績を備えたソフトウェアアプリケーションが SaaS プロバイダーによって管理されているという点を合わせると、SaaS 製品のほとんどはチームメンバーにとってワークフローに組み込みやすいものであると納得できるでしょう。
購入前に体験できる
新しいソフトウェアアプリケーションの導入ではいつでも、多少のリスクが伴います。 ユーザーがアプリケーションを気に入らないかもしれません。 機能の情報が誤っている可能性もあります。 アプリケーションが、ユーザーが期待していたほど有用ではないこともありえます。
大半の SaaS 製品には期間限定の無料体験版が用意されています。つまり、自身で試して、その特性や機能がニーズに合っているか確かめることができます。
たとえアプリケーションに無料トライアル期間が用意されていない場合でも、SaaS は小規模から試しやすいものです。 もし概念実証プロジェクトが上手くいったなら、大規模なロールアウトでも成功するという自信を深めることができます。
おわりに
クラウドコンピューティングや、クラウド内で運用される SaaS モデルは、今やニューノーマルとなっています。 チームが分散体制であっても、クラウドベースの SaaS 製品を活用すれば世界中からコミュニケーションやコラボレーションを行えます。 ユーザーはマウスクリックと少しのキーボード入力だけで、SaaS 製品のメリットを瞬時に得ることができます。 IT チームは、バグの発生しやすいオンプレミス環境でのトラブルシューティングから解放され、より重要な経営上の目標に注力できます。
SaaS アプリケーションには、購入前のトライアルが用意されています。 また、使い方もすぐに覚えることができ、利用開始前の段階からヘルプデスクに問い合わせる必要もありません。 システムのバグは調査済みであり、アップグレードの実行で待たされることも、いつになったらソフトウェアを利用できるのかと悩むこともありません。 さらに、SaaS ならスケーリングや統合も短時間で簡単に終えられます。
大規模な組織なら、SaaS 製品のライセンスを契約することで、クラウドベースのモデルならではの効率性により総コストを抑えることができます。 組織のユーザーは、ソフトウェアの全機能を数時間で利用できるようになります。数日や数週間、あるいは数か月後も待つ必要はありません。
今後新しいツールの購入や既存ソフトウェアのアップグレードを行う際には、ぜひ、この記事で学んだ SaaS のメリットを参考に検討を進めてみてください。