エンジニアリングDec 20, 20217 分 READ

仮想化とは? 概要やトップ6の仮想化導入メリットを解説

Ron Powell

Senior Manager, Marketing Insights and Strategy

仮想化とは?

仮想化の誕生は 1960 年代。 コンピューター サイエンスの歴史では、ほとんど最古参の存在です。 このように古いアイデアですが、現在においてその重要性は最高潮に達しています。

ご存知のとおり、ハードウェアは多額のコストがかかります。 しかし、それだけのコストをかけているにもかかわらず、ハードウェアの処理能力を活かしきれていない企業がほとんどです。 “サーバーは 1 台 1 役” という考えに縛られ、サーバーの力をムダにしているケースも少なくありません。

仮想化を導入して、このように近視眼的なサーバー管理とはお別れしましょう。 物理サーバー上に多数の仮想インスタンスを配置すれば、マシンの力を余すところなく利用できます。

本記事では、仮想化の基礎の基礎と、サーバー仮想化のメリットについて詳しく解説します。

仮想化とは?

仮想化とは、単一の物理マシンを複数の仮想コンピューターとして動作させるコンピューティング手法のことです。 実際には、ソフトウェアによる抽象化レイヤーを経由することで、1 台のコンピューターを複数の “仮想” マシンに分割し、効率的な利用を可能にしているのです。 こうすることで、たくさんの種類のオペレーティング システムでさえ、同一のハードウェア上で独立して、同時に実行できるのです。

仮想化を効果的に実装できれば、マシンの力をフル活用して必要なハードウェアの台数を抑えられます。 つまり、あまり使わないサーバーをわざわざ購入し管理するコストをなくして、貴重な資金を節約できるのです。

仮想マシンとは?

仮想マシン (VM) とは、仮想化によって物理マシンを分割したことで生まれる仮想インスタンスのことです。 VM には、物理マシンに備わっている処理能力、メモリ、ストレージが規定の量だけ割り当てられ、独立したコンピューターとして動作します。

VM はそれぞれ、他の VM とは独立してオペレーティング システムやアプリケーションを実行します。 そのため、VM どうしで干渉しあうことがないように、基盤ハードウェアとやり取りするハイパーバイザーというソフトウェアが欠かせません。

ハイパーバイザーとは?

ハイパーバイザーとは、ハードウェアと VM とのやり取りのすべてを仲介するソフトウェア レイヤーです。 リソースの割り当てを担当し、複数の VM が 1 つのコンピューティング パワーを分け合って適切に動作できるよう調整します。 ハイパーバイザーは、仮想マシン モニター (VMM) とも呼ばれます。 1 台の物理マシン上で、独立した複数のオペレーティング システムを同時に実行するには、ハイパーバイザーが不可欠です。

ハイパーバイザーは、コンピューティング リソースの割り当てや管理だけでなく、VM の保護も担います。 VM どうしを分離することで、仮想環境内のいずれかの VM でエラーやクラッシュが生じても他の VM に影響が及ばないようにしているのです。

仮想化の導入メリット

ビジネスや開発環境を問わず、仮想化には大きなメリットがあります。 現在では、IT の効率向上を目指すうえで仮想化が中核をなしています。また、仮想化を導入することによりクラウドコンピューティング環境などの構築はもちろん、管理運用やハードウェアの導入コストの削減、高い柔軟性を持つシステムの構築など多様なメリットが存在します。

それでは、コスト節減や DevOps の効率化、サービス可用性の向上などの面で、仮想化にどのような効果があるのか見てみましょう。

仮想化はコストを削減できる

コンピューティング パワーは決して安くありません。 もしも、リソース増強の手段が新しいハードウェアの購入しかないなら、どれだけ資金があっても足りないでしょう。 仮想化の導入にあたっては、まず既存のインフラを点検し、コンピューティング リソースのムダを洗い出すことになります。

既存リソースのほんの一部しか使わないで済むようなアプリケーションを実行するために、サーバーを調達し、デプロイしているケースも珍しくありません。 これでは、サーバーの力をほとんど活用できていないことになります。 それどころか、アプリケーションが実行されていない時には、これらのサーバーは完全に置物になってしまいます。

環境を仮想化すれば、ジョブの実行に必要なコンピューティング パワーだけを各 VM に割り当てられます。残ったリソースは、他の VM とその上で動作するアプリケーションで活用できるのです。

ほとんどの場合、ハードウェアを増設し購入するよりも、仮想化を導入した方がコストを抑えられます。

復旧が早い

仮想化したサーバー環境は、従来の環境とは異なりハードウェアに依存しません。 VM のバックアップやコピー、クローンを、複数の物理ハードウェアに簡単に取っておくことができるのです。

ハードウェアを増設する場合、デプロイの準備が整うまで数日から数週間、長いときには数か月かかるものです。 しかし、VM のバックアップであればものの数分でデプロイできます。 マーフィーの法則で言われるような事態に陥っても、VM なら心配はいりません。最小限の労力で、別の場所にある別のマシンへ素早くデプロイできるからです。

可用性が高い

VM のクローニングにはほとんど手間がかかりません。そのため、極めて高い可用性を備えた冗長な仮想環境も簡単に構築できます。 仮想環境では、VM の状況は自動でモニタリングされ、問題発生時にはバックアップ用 VM に素早く切り替えられます。仮想化なら、ハードウェアにもソフトウェアにも単一障害点がない、信頼性が非常に高いシステムを実現できるのです。

このような “フェイルオーバー” システムには、問題が発生しても、その直前の状態から VM の運用をシームレスに継続できるという効果もあります。 つまり、どのような問題が発生しても、サービスの可用性を最大限に維持できます。

また、仮想環境全体のモニタリング、構成、再起動はリモートで行えます。 開発者が物理サーバーからどれだけ離れた場所で仕事をしていたとしても、いつでもアクセスできるので、ダウンタイムが発生しても容易に問題を解決できる体制を整えられます。

効率が高い

仮想環境は、物理環境に比べて管理が非常に簡単です。 物理環境のように多数のサーバーを一つひとつ管理するのではなく、1 つのマシンからすべての VM の構成、モニタリング、アップデートを行えるからです。 そのため、アップデートのデプロイやセキュリティ パッチの適用、新しいソフトウェアの インストールを短時間で完了できます。

IT 部門にとっては、管理しなければならない物理ハードウェアが減るので、物理環境の管理に費やす時間を抑えられるというメリットがあります。開発者にとっては、ハードウェアの増設で悩むことなく即座に VM をスピンアップできるという効率性の高さが魅力です。

仮想環境は、その成り立ちからしてスケーラビリティに優れています。 負荷が増した場合も、手早く同じ VM のインスタンスを複数デプロイして対応できます。このようなスケーラビリティの高さにより、ビジネスの成長を常にサポートし、維持し続けられます。

DevOps との親和性が高い

開発者にとって、仮想化は良き相棒です。 ハードウェアを増設することなく、本番環境と開発環境を実質的に分割できるからです。

テスト環境のセットアップも、VM をクローンするだけと驚くほどシンプルです。 クローンした VM 上で、本番環境の製品に影響を与えることなく、機能をテストしバグの修正を行えます。

従来のようなハードウェアベースの環境では、開発マシンの更新や管理に気を配り続けなければなりません。 稼働中のサーバーを正確に再現したテスト用サーバーを維持し続けるのも、同様に困難です。

こうした問題をすべて解決できるのが VM です。 仮想環境なら、本番環境を完璧に再現した仮想マシンを好きなだけ用意し、開発者がいつでもアクセスしてテストできます。

仮想化を開発で利用すれば、更新に素早く対応し、ソフトウェアのセキュリティを高めながら、開発からテスト、デプロイまでつながる効率の良いパイプラインを実現できます。

環境にやさしい IT

長い目で見れば、仮想化とは環境にやさしい IT アプローチとも言えます。 必要なハードウェアを減らして、消費電力を抑えられるからです。究極的には、カーボン フットプリントの削減にもつながります。

消費電力の削減は、環境面だけでなく、収益面でもうれしいものです。 サーバーやデーター センターの管理費用を抑えられるからです。 浮いた資金を他のベンチャーへの投資に回し、環境への配慮を高めてもよいでしょう。

まとめ

1 台の物理マシンを複数の仮想マシンに分割することで、今あるハードウェアを余すところなく活用し、コストを抑えながら DevOps の効率を高められます。 仮想化を行わない場合、使われないサーバー能力はムダになります。 これは、ビジネスの収益面だけでなく、環境への配慮という面でも好ましくありません。

本記事でご紹介した 6 点のメリットは、仮想化の可能性の一端に過ぎません。 まだ仮想化を導入されていない場合は、お使いのインフラを今すぐ精査することをお勧めします。 仮想化によって得られるメリットの大きさに驚くことでしょう。

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