AI DevelopmentOct 20, 20267 分 READ

Superhuman の CTO に学ぶ、AI で生産性を高める 7 つの教訓

Jacob Schmitt

シニア テクニカル コンテンツ マーケティング マネージャー

今では多くの企業が自社のプロダクトに AI を組み込んでおり、それを開発の中心的な機能と位置づけている企業も少なくありません。しかし、そうした企業の多くは、自社のエンジニアリングチームに AI ツールを日常的に使ってもらう方法をいまだに模索しています。

Loïc Houssier が 2025 年初めに CTO として Superhuman に加わったとき、チームはまさにその状態にありました。同社は何年も前から AI を活用したメール機能を提供していましたが、社内での AI 開発ツールの導入はまだ始まったばかりでした。彼に課されたのは開発速度を上げることであり、そこが出発点になりました。

Confident Commit ポッドキャストで、Loïc はそれが実際にどのようなものだったのかを語りました。ここでは、うまくいった取り組みと、それを自社の AI 導入に応用する方法を紹介します。

1. まずはお役所仕事をなくす

AI の導入を遅らせる一番の近道は、何かを試すたびに許可を求めさせることです。実験を始める前にチケットを提出したり、サブスクリプションの必要性を説明したりしなければならないなら、ほとんどのエンジニアはわざわざ試そうとはしません。

Superhuman で Loïc が最初に取り組んだのは、こうした手間を完全になくすことでした。エンジニアは承認も理由の説明もなしに、好きなツールのライセンスを自由に取得できるようになりました。「サブスクリプションが 1 つでも 2 つでも 3 つでも、10 個でも構わない。全部使ってくれ」と彼はチームに伝えました。

チームへのヒント: AI ツールが使われすぎているなら、それはむしろ歓迎すべき問題です。サブスクリプションの承認プロセスをなくし、エンジニアが自分で導入できるようにして、整理は後から行いましょう。使いすぎはいつでも抑えられます。しかし、競合他社がリリースを重ねている間に申請フォームで失った数か月は取り戻せません。

2. ポリシー文書ではなく AI ギルドをつくる

チームが試行錯誤する時間を十分に取れたら、次のステップは、すでに成果を上げている人を見つけ出し、その知見を共有する場を用意することです。

Superhuman では、それが Loïc が第 2 四半期に立ち上げた AI ギルドという形になりました。これはガバナンス委員会ではなく、自然とこうしたツールに引き寄せられ、実際のユースケースを見つけていたエンジニアのグループです。メンバーはうまくいっていることを共有し、まだ未完成なものを指摘し、毎月評価を見直します。

チームへのヒント: 形式よりも大切なのは頻度です。どのような体制を選ぶにしても、毎月の見直しの機会を組み込みましょう。4 週間前には物足りなかったツールも、アップデートで評価が一変しているかもしれません。この分野の変化の速さを考えると、四半期ごとに方針を固めるのでは遅すぎます。

3. 最も尊敬されている懐疑派を味方につける

多くのチームは、熱心な人に布教を任せがちです。しかし、導入を後押しするのは熱意よりも信頼です。チームを動かすのに最も適しているのは、すでに皆から尊敬されている人です。

Loïc は、Superhuman で最も熱心な導入者に頼って勢いをつけようとはしませんでした。彼が引き入れたのは、組織全体が一目置く最もシニアなエンジニアであり、しかも AI の盛り上がりに懐疑的な人物でした。そのエンジニアはツールを徹底的に試し、考えを改め、AI が本当に役立つ場面について語り始めました。チームの他のメンバーへの効果はすぐに表れました。Loïc の言葉を借りれば、「Mike がやっているなら、私たちもやらないとまずい」ということです。

チームへのヒント: チームがすでに信頼している人を見つけ、ツールをじっくり試す時間を確保してもらいましょう。意見は本人に委ねます。その人が考えを改めれば、組織の他のメンバーもついてきます。

4. ツールを見直す時間をしっかり確保する

AI ツールは変化が速いため、早くから導入したエンジニアでさえ取り残されることがあります。セットアップを見直す専用の時間がなければ、ほとんどの人は何か月も前に設定した環境をそのまま使い続けてしまいます。

Superhuman では、四半期ごとの「クオリティウィーク」でこれに対応しています。この週にはロードマップも機能開発のプレッシャーもありません。チーム全員が 1 週間かけてバグをつぶし、修正したバグの数や、ユーザーへの影響の大きさなどに応じて表彰が行われます。ただし、本当の成果は、ツールを見直すための余白が生まれることにあります。週の初めには、チーフアーキテクトが自身の Claude Code の設定をベースラインとして紹介します。週末にツールをいじるのが好きなエンジニアには、発見を共有する場があります。とにかく動くものを渡してほしいエンジニアには、ゴールデンパスが用意されます。

チームへのヒント: 少なくとも四半期に 1 回、デリバリーのプレッシャーなしにチームが AI ツールのセットアップを見直せる時間を定期的に確保しましょう。誰もゼロから始めなくて済むように共通のベースライン設定を用意し、サイクルごとにそのベースラインを更新していきます。

5. コードから始めない

コードベースに AI を近づけることをためらうエンジニアがいるなら、いきなりコード生成を勧めるのはやめましょう。まずは、本人ができればやりたくないと思っている面倒な作業から始めます。

Loïc は、気の進まないエンジニアを、リスクの低い作業へと導きました。ドキュメントの要約、面接の録音からのメモの抽出、なじみのないコードベースの把握といった作業です。Loïc 自身も、Claude Code をコードを書くためだけでなく、主にさまざまな MCP をまたいで使う汎用アシスタントとして活用しています。

チームへのヒント: ためらっているエンジニアには、まずドキュメントの要約、会議メモ、コードベースの調査など、コード以外のタスクを勧めましょう。どうせやりたくなかった作業で AI が 30 分を節約してくれる体験をすれば、よりリスクの高いユースケースへの抵抗感もずっと小さくなります。

6. リスクレベルに応じて異なる SDLC を運用する

多くのチームは、プロダクト全体を 1 つの開発スピードで進めがちですが、すべての領域に同じ品質基準が必要なわけではありません。プロダクトの中には、ブランドの中核をなし、完成度の高い状態でリリースすべき部分があります。一方で、多少粗くてもいいから早く進めてほしいとユーザーが積極的に望んでいる領域もあります。

Superhuman のブランドは品質の上に成り立っており、ユーザーはそれに対してプレミアムな料金を支払っています。Loïc は同社のリリース基準を、完璧になるまで世に出さないという Apple の考え方になぞらえました。一方で、顧客は MCP のサポートや新しいモデルも求めており、それを早く手に入れられるなら多少のトレードオフは受け入れるつもりです。そこで Loïc は、デリバリープロセスを分けて運用しています。ユーザーが反復的な改善を歓迎する領域には、より速く実験的なトラックを、コアな体験には完成度を重視したプロセスを適用しています。

チームへのヒント: プロダクトの各領域を洗い出し、それぞれにリスク許容度を割り当てましょう。ユーザーがスピードを求める領域ではより速く実験的なトラックを運用し、コアな体験では完成度を重視したプロセスを維持します。プロダクト全体を 1 つのリリーススピードで進めるのは、ほぼ間違いなく誤ったデフォルトです。

7. 品質の責任をユーザーと分かち合うことに慣れる

プロダクトがユーザーのプロンプトに依存している場合 (たとえば、自然言語でメールのフィルターを定義する機能など)、出力の品質はもはや完全には自分たちの手の中にはありません。曖昧なプロンプトからは曖昧な結果しか得られません。これは、エンジニアリングチームが体験全体に責任を持つ従来のソフトウェアとは根本的に異なる力学です。

Superhuman は、最悪の失敗パターンを捉えるために評価 (eval) を活用しています。でっち上げの悪い知らせで誰かの心拍数が跳ね上がるとなれば、ハルシネーションを含んだメールの要約は深刻な問題です。とはいえ、エンジニアリングチームはこれを新しい現実として受け入れてもいます。AI の出力は常に完璧なわけではありません。求められているのは、モデルがリリースされるたびに、ユーザーの期待とシステムが実際に提供するものとのギャップを縮めていくことです。

チームへのヒント: AI の失敗パターンを捉える評価に投資し、出力の品質を継続的に高めるフィードバックループを構築しましょう。同時に、プロンプト駆動の機能では品質を左右する要素の一部がユーザー側に移ることを受け入れ、それを踏まえて体験を設計しましょう。

AI ネイティブなエンジニアリング文化への道

AI による生産性向上を組織全体に広げるには、まず導入に伴う認知的な負担を減らすことから始まります。調達の手間をなくし、尊敬される懐疑派を味方につけ、ツールのゴールデンパスを用意することで、チームは本当に重要なこと、つまり高品質なソフトウェアのリリースに集中できるようになります。AI を活用したワークフローへの移行は、技術的なハードルというよりも、継続的な実験と品質責任の共有に向けた文化の転換です。

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