バグは目につきにくいところに潜んでいます。うるう年の2月29日を弾いてしまう日付バリデーター、コードレビューをすり抜けるエッジケース、ローカルでは通るのに CI では落ちる不安定なテスト。こうした問題はコードベースへの信頼を損ない、デバッグに多くの時間を費やす原因になります。
AI 支援型開発の時代を迎え、コードの書かれるスピードはかつてないほど速くなっています。しかし、スピードにはリスクが伴います。AI コーディングアシスタントがコードを高速に生成する一方で、微妙なバグが紛れ込みやすくなり、コードを書いてから問題に気付くまでのフィードバックループが複数のコミットにまたがることもあります。バグがコードベースに長く残るほど、修正は困難になります。
CircleCI の自律型 CI/CD エージェント Chunk は、AI の機能を継続的インテグレーションのパイプラインに直接組み込みます。IDE ベースのツールとは異なり、Chunk はパイプライン全体のビルド履歴、テスト結果、失敗パターンにアクセスできます。そのため、バグの特定、根本原因の診断、修正コードの生成までを自動的に行うことができます。本ガイドでは、Chunk を使ってバグをすばやく修正する方法を紹介します。
Chunk のセットアップ
Chunk を使い始めるには、すでにパイプラインを実行しているプロジェクトを持つ CircleCI アカウントが必要です。CircleCI を初めてご利用になる場合は、getting started guide を参照してリポジトリを接続してください。
ご自身のプロジェクトで進めることも、すぐに使えるサンプルとして GitHub のデモプロジェクト を利用することもできます。
プロジェクトが CircleCI で実行されている状態になったら、次の手順を行います。
- CircleCI ウェブアプリのサイドバーで Chunk を開きます。
- Set up Chunk をクリックし、表示される手順に従って GitHub へのアクセスを認可します。Chunk はリポジトリを解析するための読み取りアクセスと、修正を含むプルリクエストを作成するための書き込みアクセスを必要とします。
- モデルプロバイダーのキーを選択します。CircleCI 組み込みのキーを使うか、プロンプトが表示されたら Anthropic または OpenAI の API キーを接続します。CircleCI のキーを使用する場合は、利用できる無料トークン数に上限があります。
Chunk は既存の CircleCI パイプラインに直接統合され、再設定は一切必要ありません。認可が完了すると、リポジトリのコードとビルド履歴の両方を解析し、プロジェクトの仕組みを把握できるようになります。セットアップの詳細な手順については、Chunk documentation を参照してください。
Chunk にバグ修正を依頼する
Chunk を有効化したら、サイドバーから Chunk を選択します。すると、Chunk に実行してほしい内容を入力できるプロンプト画面が表示されます。
シンプルなプロンプトを入力するか、用意されているプリセットの中から選択します。ここでは「Fix bugs(バグを修正する)」プリセットを選択します。自動的に以下のプロンプトが設定されます。
Help me identify and fix bugs in my code.
Submit をクリックすると、Chunk が処理を開始します。Chunk は CI/CD 環境上で動作するため、テスト履歴、エラーログ、複数のパイプライン実行にわたるパターンにアクセスできます。このデータをもとに、潜在的なバグやエッジケースを特定し、ソースコードを調べて原因を把握し、的確な修正を生成します。
結果を確認する
Chunk の解析が完了すると、検出したバグと生成した修正の概要が表示されます。このページで詳細を確認し、プルリクエストを作成するかどうかを判断できます。変更内容に満足できない場合は、プルリクエストを作成せずにプロンプトを修正することもできます。
Chunk は検出結果と変更内容を以下のように説明します。
Summary
Added leap year logic to the date validator to correctly handle
February 29th on leap years.
Changes
Added leap year calculation based on standard rules (divisible by 4,
except centuries unless divisible by 400)
Updated maxDay for February to be 29 on leap years instead of always 28
Changed maxDay from const to let to allow reassignment for leap years
変更内容に問題がなければ、Open Pull Request をクリックしてリポジトリにプルリクエストを作成します。
マージする前に、生成された修正がバグを正しく解決しているか、また新たな問題を引き起こしていないかを必ず確認してください。
より具体的なプロンプトの活用
シンプルな「Fix bugs」プロンプトは、汎用的なバグ探しに効果的です。Chunk の調査対象をより細かく制御したい場合は、具体的なプロンプトを試してみましょう。
不安定なテストに絞りたい場合:
Fix flaky tests in the test suite
特定のモジュールに絞りたい場合:
Fix the failing tests in src/processors/batch.js
修正せずに診断だけ行いたい場合:
Analyze the flaky tests and explain why they're failing, but don't
make changes yet
特定のエラーパターンを修正したい場合:
Fix the timeout errors in the pipeline processor tests
プロンプトを具体的にするほど、Chunk の解析もより的確になります。
詳細設定
基本的な操作に慣れてきたら、Chunk のカスタマイズ設定を活用しましょう。
環境のセットアップ
複雑な依存関係や外部サービス、特定のランタイム要件を持つプロジェクトでは、.circleci/cci-agent-setup.yml ファイルを用意することで、テスト環境の準備方法を Chunk に正確に伝えることができます。
Chunk が失敗を正確に再現する必要があるため、これはバグ修正において特に重要です。代表的なユースケースは次のとおりです。
- データベースのセットアップ: バグがデータベース操作に関係する場合、Chunk はテストで使用しているものと同じデータベース設定にアクセスする必要があります
- 外部サービス: 競合状態やタイミングの問題に関与しうる Redis、メッセージキューなどのサービス
- 環境変数: コードの挙動に影響する API キー、フィーチャーフラグ、設定値
- 特定のランタイムバージョン: バグがバージョン依存の場合、本番環境と一致させることが重要です
以下は、PostgreSQL を使う Python プロジェクトの例です。
version: 2.1
workflows:
main:
jobs:
- cci-agent-setup
jobs:
cci-agent-setup:
docker:
- image: cimg/python:3.12
- image: cimg/postgres:15.3
steps:
- checkout
- run:
name: Install Dependencies
command: pip install -r requirements.txt
- run:
name: Setup Database
command: |
psql -c "CREATE DATABASE test_db;" -U postgres
環境の準備のみに集中してください。実際のテスト実行コマンドは含めないでください。Chunk はメインの config.yml をもとにテストの実行方法を判断します。
Chunk は必要に応じてこのファイルを自動的に作成しようとします。手動で生成することもできます。Organization Settings -> Chunk Tasks に移動し、対象タスクのメニュー(…)をクリックします。Chunk Environment をクリックし、続いて Create File in GitHub をクリックします。詳細については、Chunk environment documentation を参照してください。
カスタム指示
Chunk のバグ修正アプローチをカスタマイズするには、リポジトリのルートに claude.md または agents.md ファイルを作成します。以下のような指針を記述できます。
- タイミングに依存するテストの扱い方(モックを使うか、タイムアウトを延長するかなど)
- 非同期テスト処理の推奨パターン
- リトライ処理を追加するか、根本原因を修正するかの方針
- ログ出力やデバッグに関するルール
Chunk はこれらのファイルを読み取り、修正コードを生成する際にチームの方針を反映します。
テスト履歴の解析
Chunk のバグ検出精度は、テスト履歴の蓄積とともに向上します。CircleCI の設定ファイルに store_test_results を含め、Chunk が複数のパイプライン実行にわたるパターンを検出できるようにしてください。断続的にテストが失敗するケースは、直近のビルドでパスしていても不安定なテストとしてフラグが立てられます。このように履歴データを活用した分析は、静的コードだけを対象に動作するツールとは異なり、CI/CD パイプライン内に組み込まれた AI エージェントならではの大きな強みです。
AI 開発エコシステムにおける Chunk
AI コーディングアシスタントが IDE 上でのコーディングを高速化する一方、Chunk はバグが実際に発見・検証される CI/CD レイヤーで動作します。
この位置付けには、大きな意味があります。CI/CD パイプラインは、コードが実際の環境で試される場所です。本物の依存関係に対してテストが走り、負荷のかかる状況で競合状態が発生し、「理論上は起こりうる」にすぎなかったエッジケースが実際に失敗として表面化します。この CI/CD レイヤーに AI を組み込んでいるからこそ、Chunk は IDE ベースのツールでは得られない情報を活用できるのです。
AI コーディングアシスタントを利用しているチームに向けて、CircleCI は CircleCI MCP サーバーも提供しています。Model Context Protocol を介して、AI アシスタントをパイプラインに直接接続できます。ビルドが失敗した際、AI アシスタントがログを取得し、原因を分析して修正案を提示してくれるため、エディタを離れる必要はありません。Chunk と MCP サーバーを組み合わせることで、CI でバグを検出しどこからでもデバッグできる、統合された AI 開発ワークフローが実現します。
まとめ
バグがチームの生産性を下げる必要はありません。Chunk はコードベースとパイプラインの履歴を解析し、エッジケースの見落としやロジックエラーなどの問題を検出し、根本原因を診断し、コードをより堅牢にする修正を生成します。AI 活用型開発によってコード変更のペースが加速する中、バグを検出・修正してくれる自律型エージェントは、コード品質の維持に欠かせない存在です。
ぜひご自身の環境で試してみてください。無料の CircleCI アカウントに登録し、Chunk を有効化することで、バグの自動修正をすぐに始められます。