基幹系システムの⁠全⁠面⁠刷⁠新⁠をCircleCIが支える
アプリ開発の自律化、インフラ構築の自動化を促進
先進テクノロジーを導入し、基幹系システムを全面刷新
FA(Factory Automation)製造装置用部品や、自動車や電子・電気機器などの金型用部品、生産の自動化関連間接材の製造・販売を行うミスミ。製造、医療、食品などの業界の、オートメーションの現場で必要とされる機械部品や工具・消耗品をグローバル 33 万社以上に販売している。
同社の特徴は、製造機能を持つメーカー事業と、他社ブランド品を含め、自動化関連間接材から消耗品まで幅広い商品を販売する流通事業という2つの顔を持つことだ。機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy(メビー)」は第9回ものづくり日本大賞で内閣総理大臣賞を受賞。アップロードされた機械部品の3D-CADデータを基に、AIによる即時見積もりおよび最短1日での出荷を実現する。
また、これらの事業の持続的成長をITによって支えるべく、同社が2019年から推進しているのが「NEWTON(NExt generation & World class Technology Oriented New platform)プロジェクト」だ。「トップマネジメントの強いリーダーシップのもと、基幹系システムの全面刷新を進めています。先進テクノロジーを積極的に導入した新システムは、すでに台湾とタイへの展開を完了しています。引き続きアジア各国の現地法人や日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国などへ展開予定です」とミスミグループ本社の石原 昌尚氏は説明する。
「アプリ開発チームの間にも CircleCI が浸透していき、現在は約400名のユーザーが活用しています。」
石原 昌尚 氏 | NEWTON 基幹開発推進室セクションリーダー | Misumi
既存のCI/CDツールでは開発チーム主導の活用が困難だった
NEWTONプロジェクトを加速するため、ミスミが注目したのがCI/CDツールである。
「新しい基幹系システムではマイクロサービスアーキテクチャーを採用しています。必要なサービスは30近くに上りますが、これらをストレスなく開発するために、テストやデプロイを自動化するCI/CDツールが不可欠でした」(石原氏)
これについて同社は、以前からECのフロント系サービスの開発にオープンソースのCI/CDツールを活用してきた。だが、そのツールの横展開では求める効果が得られないと考えた。設定や操作が複雑で手間がかかるため、結局、インフラチームが環境を整え、アプリ開発チームに提供するスキームになっていたからだ。
例えば、アプリ開発チームがCI/CDパイプラインを改善したいと考えた場合も、インフラチームに変更依頼をかける必要があった。「また、外部サービスと接続する際に、毎回コネクタを開発しなければならないことも課題でした。インフラチームのリソースがボトルネックになり、対応に数週間かかってしまうこともあったのです」と石原氏は振り返る。
そこで新たに選択したのがCircleCIである。設定や操作が簡単で、アプリ開発チームが自ら使いこなせる。加えて大きな決め手になったのは、同時実行コンテナ数が無制限であることだった1。「マイクロサービスの開発を加速するには、ほかのチームの状況を気にせず、各チームが任意のタイミングでビルド/デプロイを行える環境が必要です。さらに、CircleCIは多彩な外部サービスと連携できるほか、CircleCI Orbsを使えばパイプラインを複数チームが再利用できます。開発効率を大きく高められると考えました」と石原氏は言う。
自動化により、インフラの構築・運用とアプリ開発を変革
まず行ったのが、アプリ開発チーム向けのCircleCI利用ガイドラインの作成である。サービスのビルド/デプロイの自動化をアプリ開発チームが自ら行えるようにするには、一方でガバナンスをしっかり利かせることが肝心だからだ。インフラチームが標準的なパイプラインのテンプレートを用意し、アプリ開発チームに提供している。
「これが1つの後押しとなって、CircleCIがアプリ開発チームに浸透していきました。現在は約400名のエンジニアが利用しています」と石原氏は紹介する。
アプリ開発チームの活用レベルは日増しに上がっており、現在は自ら用意した自動テストのスクリプトを標準テンプレートに組み込むといった独自の改善/カスタマイズや、CircleCI Orbsを用いたSaaSサービスとの連携も行われているという。ほかにもCircleCIは、NEWTONプロジェクト全体に大きな効果をもたらしている。その大きな要因となったのがIaC(Infrastructure as Code)への活用である。
同社の新たな基幹系システムは、アプリケーション層、マイクロサービス層、SAP S/4HANAの運用を担うエンタープライズ層の3つに分かれており、このうちアプリケーション層とマイクロサービス層はアマゾン ウェブ サービス(AWS)、エンタープライズ層は Google Cloud Platform(GCP) を基盤としている。
このようなマルチクラウド構成で、仮にAWSとGCPの管理コンソールから個別にインフラを構築・運用するとなれば、インフラチームは属人的な作業に忙殺されかねない。その点同社は、CircleCIを用いることでこの問題を事前に解消した。
「GitHubでリポジトリを管理し、CircleCIでIaCの仕組みを回すことで、大規模なインフラの同時構築・同時メンテナンスを実現しています」(石原氏)。インフラチームの負担軽減、属人化の解消に加え、開発プロセス全体の期間短縮にもつなげているという。
このようにCircleCIは、いまやミスミのIT戦略そのものを支える基盤の1つになったといっても過言ではないだろう。今後も同社は、マルチクラウド環境のインフラ構築・運用の高度化、サービス開発の内製化をさらに加速していく構えだ。
「それに向けては、優秀なエンジニアが常に足りない状況です。CircleCIのような先進サービスや、さらに新しいテクノロジーも積極的に活用しながら、グローバルに広がる当社のビジネスを支えてくれる人材を求めています。“挑戦志向”を持つ方に、ぜひ参画してもらいたいです」と石原氏は最後に語った。
構成
• アマゾン ウェブ サービス • Google Cloud Platform
課題
• アプリ開発チームが自ら活用/改善できるCI/CD環境を求めていた • マイクロサービスアーキテクチャーに対応した開発環境が必要だった • 大規模なIaC開発のためのCI/CDのプラクティスが欲しかった
導入成果
• アプリ開発チーム自身のカスタマイズにより開発スピードを向上 • マイクロサービス毎のタイミングでストレスなくビルド/デプロイ • 大規模なインフラの同時構築、同時メンテナンスを実現
Intervieweeの紹介
• 株式会社ミスミ NEWTON基幹開発推進室 セクションリーダー 石原 昌尚 氏
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Performance Planの場合 ↩